好きな作家の絲山秋子さんの新作。「会社員小説」とのコピーの通り、ある地方の中小企業の会社員それぞれの視点から、会社員生活やチャラ男(三芳部長)に対しての思い(ほぼ悪口)が描かれている。
20代の女性社員が実は政治家を目指していたり、不倫にはまってしまう心情がリアルな30代女性だったり、妻子持ちの地獄を描いた40代男性だったり。69歳の社長が語る今までとこれからの日本の話など。 当たり前だけど、全部の人格を絲山さんが書いてると思うとすごい。
会社の中の人間模様を描くだけではなく、それぞれの人を通じて、いまネットで議論されているような社会問題を描いている。
ロスジェネ問題、世の中に寛容になれるか問題、たばこなどの規制の問題、男女の断絶の問題、年とらないと女性性と和解できない問題、男性の履いてた下駄手放したくない問題、鬱などなど。
ついついくだらないネットニュースを毎日見てしまうけど、それよりこれ読んだほうがよっぽどいいと思った。まさにいまの問題全部詰まってる。
さらに平成から令和への移り変わりがリアルに描かれてる。今読むべきだし、しばらく経ってから読んでも、「あのときこうだったなー」と思えそう。
会社員の中に実は犯罪者がいたり、秘密のある人がいたりとミステリー?サスペンス?要素もある。ある人物が女性に暴力をふるう場面はめっちゃ怖かった。女性のほうはなんでそうなる?とも思ったけど、ああいう人もいるのかも。
チャラ男もそんなことまでする奴だったんだ、とか社長の赤いプリウスの件はなんだった?とか。
具体的な土地がでてくる小説が多い絲山さんだけど、今回の舞台はどこだろう?と思っていた。田舎で、役員だけが車通勤で、田んぼに朱鷺が来て、日帰りで東京に行けそうなところ???バスセンターもあるなら新潟??
結論から言うと、トークイベントでご本人がおっしゃっていたのは「悪いことも書くので今回は架空のところにした」そうです。
とにかく現代の問題全てがでてくる作品なので、会社員もそうでない人も読むべし。
「御社のチャラ男」刊行記念のトーク&サイン会に行ってきた。
電話予約しておいたら、最前の真ん中に自分の名前がはりだされていてびっくり。絲山さんは東京生まれだけど、会社員時代に福岡、名古屋、高崎、大宮など転勤があり、東京暮らしでは気づかなかったこと気づいたそう。福岡で食べた鯖に感動したらしい。他には北日本新聞で連載していた富山県内各地を巡ったことのお話など。富山県民は真面目で優しい、恥ずかしがり屋だけど、いったん話始めると止まらないらしい。優しい以外は私も一致だな。発電所美術館など私も大好きなスポットにふれていただいて、うれしかった。
あとは他の方言に比べて富山弁は難しいらしい。たしかに、県西部と東部、さらに海の近くとそうでないかでも全然違うかも。現在連載中の「まっとうな人生」のはなちゃんの夫は黒部の生地出身だそう。小説内の富山の方言にアドバイスしてくれてる方がいるらしい。正直私はちょっとおかしいと思ったところもあったが、黒部の知り合いは少ないので、分からないのかも。魚津の「きゃーん」(これ)とかも30歳過ぎてから知ったし。
はなちゃんとなごやんが会ったのがなぜ氷見番屋なのかも疑問に思っていたけど、絲山さんが取材したからなんだろうなと、謎が解けた。なぜ「逃亡くそたわけ」の続編の舞台を富山にしたかというと、富山に来たときになぜか「はなちゃんがいる」と思ったそう。(総曲輪からもうちょっと南に行ったあたりで?)絲山さんは他の作品でも「登場人物が勝手に動く」ということを述べられており、今回もそうみたい。すごい。
県美でのジャコメッティとの出会いのことも語っていただけた。私も県美に行くたびに思い出す。
他に群馬と富山の山への思いの違いなども面白かった。他の地方に行くと山の形が全然違うなーって思うよね。私は小6のときに無理に登山させられたのが嫌だった。
1時間のトークの後はサイン会。写真撮影もOKだった。推しを目の前にすると早口になってしまうキモいオタを丸出しにしてしまったが、優しく対応していただいてありがとうございました。荷物だけどお土産も渡せた。
県内では行ってないのは小矢部、雪の大谷、近くではカミオカンデと言っておられた。あと地味だけど上市とかも行っておられないならいいかな?大岩山日石寺(夏限定)とか眼目山立山寺とか。穴の谷霊場とか。上市の街並みも昭和すぎてやばい。あとは小矢部の滝乃荘にぜひ泊まって夕食を食べてほしい。