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自分のための覚書

「日出処の天子」と「MW」

先日、この記事を読んで山岸凉子を思い出し、また読みたいなあと。学生時代にいくつか友達から借りて読んだことはある。

ninicosachico.hatenablog.com

モノとしての本は買いたくないので、電子書籍を探したんだけど、全くない!山岸凉子電子書籍は許可してないらしい。買い集めるしかないのか。とりあえず文庫で「天人唐草」を購入。読むと「読んだことあったー!」と思いだした。

表題作の「天人唐草」は男尊女卑の父親に押さえつけられ育った主人公の響子の話。響子への仕打ちはひどいなと思いつつ、この時代(79年)にこの内容はすごい。毒親フェミニズム的な視点ももちろんすごいけど、ストーリーがずっしり心にくるホラーという感じでたまりません。

天人唐草 自選作品集 (文春文庫)

天人唐草 自選作品集 (文春文庫)

 

表題作ももちろんすごいが、「狐女」という作品がすごかった。9歳の美少年が田舎の資産家にひきとられ、自分のルーツを探るという話。9歳なのに全てに冷めきって性的にもねじまがっているという主人公が現実味はないけど、凄みを感じる。彼の人生の続きが読みたい。

さらに山岸凉子といえば「日出処の天子」だろうということで、図書館にあるようなので借りに行った。図書館のコミックコーナーに手塚治虫の「MW」が。「読んだことあるかな?」と思いつつ、一緒に借りてみた。

MW 1

MW 1

 

偶然、二つの作品を借りたんだけど、読んだことある人はご存知の通り、どちらの作品も主人公(厩戸、結城)が男性なんだけど、美しすぎて女性にも変装できる、男性を愛している、目的のためなら殺人を平気で犯す天才サイコなところが共通していた。さらにお相手役の男性(毛人、賀来)が頼りなく、おまえがもうちょっと受け止めるなり、たしなめるなりしていたら、悲劇は防げたのでは?と思ってしまう、どうしようもないキャラだった。(毛人はそこまでではないかな?)

 

男性カップル(?)まわりの話だけではなく、「MW」なら毒ガスの秘密、戦争やアメリカへの不信感など当時の雰囲気が伝わってきたし、「日出処の天子」なら厩戸の恐ろしいほどの政治手腕や超能力、母からの愛がないことによる孤独、同性愛、最終的にはロリコンになってしまう、毛人の妹の歪みなど、盛り沢山でどちらもめちゃめちゃ面白かった。純粋にストーリー展開が面白い。どちらも漫画の神様と言えるので当然なんだろうけど、今読んでも夢中になってしまう。

恐ろしいぐらいの天才は、こんなに孤独で誰も受け止めきれないというのは、この二人だから描けるのかな。

 引き続き、両作家の作品を読み直して、読んでないものも集めていこうと思う。