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自分のための覚書

さよならテレビ(映画) ネタバレあり 舞台挨拶

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sayonara-tv.jp

東海テレビドキュメンタリー映画はよく話題になっている。私は「ヤクザと憲法」「人生フルーツ」を見たことがあり、どちらもおもしろかった。「さよならテレビ」も話題になっており、興味を持ったので見に行った。

この映画は東海テレビ内の報道班を、ドキュメンタリー班が撮るというもの。ドキュメンタリー班が報道班のデスク下にマイクをつけたり、カメラをまわしたりしていることに、猛反発する報道班。報道班は激おこで「勝手にカメラをまわすな!」「意図はなんだ?説明しろ!」となっている。

普段、マスコミが一般の人にやってることをやられると怒るんだ。なんというブーメランギャグ。めっちゃおもしろかった。つかみはOK。

 

※ネタバレあります

 

主人公は3人。怪しいお米セシウムさん事件のときのキャスター福島さん、普段はスポンサーへのおべっかネタを仕事としてやっているが、実はジャーナリスト精神あふれる契約社員のおじさん澤村さん、派遣の若い頼りない渡邉くん

 

そこそこイケメンのアラフォーキャスター福島さんはなかなか自分の思っていることを話し辛い。セシウムさん事件で矢面に立って叩かれた傷が癒えないよう。結局メインキャスターを下ろされてしまった。次のキャスターはもっとおじさんの60代半ばの人。テレビはどうせ年寄りしか見てないから、年寄りのほうが親近感が湧くという考えらしい。すごいびっくり!!どーせ誰も見てないならフレッシュな若者にやらせればいいのに。

 

若い派遣社員の渡邉くんは失礼だけど、どうして記者になりたいの?って思うような感じの子。悪い子ではないんだけど。あまり仕事もできなそうだし、コミュ力も高くはなさそう。アイドルオタで汚部屋に住んでる。アイドルとの握手会の様子もあったけど、本当にアイドルって大変だなと思ってしまう。渡邉くんをとりあげること自体に悪意を感じる。

 

澤村さんは普段はどうでもいい仕事をしているが、いろんな討論会などに行ったりしていて、勉強している。共謀罪テロ等準備罪と表現するのは国への忖度だよね~なんて話していると、自分のところも何かしらの力で「テロ等準備罪」に変えられてしまう…なんてギャグ。フリと落ちが完璧。

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主要な人物3人のうち、2人が正社員ではない契約社員派遣社員。正社員は何をしているかというと、他局に視聴率で負けるな!と言われたり、でも残業は減らせ!と言われたりしている。渡邉くんを怒鳴ったり、映画の中ではヒールになっている。地方のニュース番組ですら、視聴率をこんなに気にしているものなんだね。食べ物ネタをやると視聴率が上がったり、ジャーナリスト精神とかはない。(ように描かれている)

 

また、見学しにきた子どもたちにマスコミの役割として、以下のように説明している。

 

1. 事件・事故・政治・災害を知らせる
2. 困っている人(弱者)を助ける
3. 権力を監視する

 

これが何回も写されるのだが、話がすすむにつれどんどんギャグになっていく…弱者である渡邉くんには教育もせず、首を切って終わりだし、忖度して「共謀罪」を「テロ等準備罪」にしてしまう。1の「事件を知らせる」についても「独自」という「他局よりすっぱぬいたぞ!」というアピール合戦になっている。

 

最後のネタばらし。報道班のことをさんざんネタにしたけど、このドキュメンタリー自体も演出がありましたよ。とご丁寧な説明。最初はちょっと驚いた。だけど、わざわざお金を払ってドキュメンタリー見るような人は、ドキュメンタリーに演出なり編集があるなんて分かってると思う。粋じゃない、とも思うし、バカにされてるのかな?とも思った。報道班や他のテレビに対してフェアでありたいと思ったのかな。「やらせ(演出・編集)をしているのはぼくたちも同じです」ということかな。私はもちろん悪いことだとは思っていなくて、それも含めて楽しんで見たい。この「さよならテレビ」についてもやらせでなくて、演出・編集程度だと信じて楽しんだ。

 

ラスト直前、澤村さんが「このドキュメンタリーは何がしたいの?テレビの闇を映し出せてるの?」という問いかけがあるが、監督はのらりくらりとしか答えない。みんなが「テレビの闇」を知りたがるけど、真実は「テレビなんてからっぽ」ってことなのかな?

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右が監督の土方さん。いかにもマスコミのお兄ちゃんって感じでチャラいよね。

 

幸運にもプロデューサーの阿武野さんの舞台挨拶も見れた。製作の経緯を話したあと、質疑応答へ。「どうしてネタバラシをしたんですか?ドキュメンタリーは真実ですか?」という直球の質問をした人がいた。そんなこと聞いたらおもしろくねーだろ、と思いつつ、なんて答えるのかなあと思った。

「実は澤村さんの部屋はセットなんです。みんなのセリフは僕が書きました。主人公の3人は役者です。」

もちろんジョークなんだけど、真面目にしゃべるから、最初の3秒は信じちゃったよね。澤村さんの部屋殺風景だし。そんな感じで阿武野さんは悪たぬきおじさんって感じだった。もちろん東海テレビ内では居心地が悪いらしい。

賛否両論あるようだけど、皮肉の効いたエンタメとして私はおもしろかった。おすすめ。